【資料室】「明治ポンチ本」の研究資料について

201904

資料室に「明治ポンチ本」関連の研究資料3点を登録しました

(1)明治ポンチ本関連・収蔵状況調査リスト(野田謙介)PDF形式
(2)明治ポンチ本刊行年表(新美ぬゑ)PDF形式
(3)明治ポンチ本関連年表(新美ぬゑ)PDF形式

明治ポンチ本は、一般的には実物に触れる機会がなかなかありません。現物はどの施設にどのくらい存在しているのか、その状況をわかる範囲で調べてまとめたのが(1)の資料です。川崎市市民ミュージアムや国会図書館など、国内の主要施設で確認できたものの基本的なデータが整理されています。(中には一般向けの閲覧に対応していない施設もありますので、実際に研究される方はご確認下さい)
(2)は、上記のデータを元にして、年表形式で出版状況を俯瞰できるようにした資料です。(3)は、マンガ関連のできごとを中心に、明治ポンチ本の時代背景を年表にまとめたものです。
3点とも、2018年10月6日の研究会「明治ポンチ本を読む」で配布された資料です。

明治ポンチ本について

現在の日本で「コミックス」といえば、主にマンガの単行本のことを指します。では、日本にはいつから「コミックス(マンガの単行本)」があるのか? その歴史を考える上で大変興味深いのが、明治ポンチ本と呼ばれる一群の出版物です。
明治時代になって、海外のカリカチュアやカートゥーンの影響を受けながら生まれた日本の「ポンチ」や「漫画」が、主に新聞や雑誌などの定期刊行物を舞台に定着・発展していく一方で、江戸以来の草双紙などの出版業者からは、明治20年代以降にポンチと名のついた冊子(単行本)が発売されていました。特に明治30年代には、東京の業者を中心に多数の本が刊行され、中にはコマ割りされたものや、それなりにストーリー性のあるものも確認されています。
これらは、単行本用の描き下ろし作品であり、新聞や雑誌などのメジャーな媒体とは異なる自由奔放な表現も多く見られ、後の時代の赤本や貸本などの源流ともなっています。
これまで湯本豪一氏や清水勲氏らの研究を通じて「明治ポンチ本」の名称で知られてきましたが、その実態は一般にはほとんど知られてきませんでした。まとまった資料としては、「川崎市市民ミュージアム紀要(5)」(1993年)に湯本豪一氏が「明治ポンチ本一覧」を発表しています。他にもいくつかの出版物で清水勲氏や宮本大人氏などが紹介をしていますが、残念ながらポンチ本の中身を読むことはできません。
日本のマンガ史を検討する上では、欠かすことのできない存在ですので、ぜひ今後この分野の研究が進むことを期待したいと思います。このサイトでも、今後現物を紹介できるよう方法を探っていきたいと思います。(佐々木果)

【国立国会図書館デジタルコレクションへのリンク】
最も盛んに出版された明治30年代のものはないが、明治20年代のものを国立国会図書館が公開しており、読むことができる。
・考へ絵ばなし:ポンチ教育(明治26年)→http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/861408
・教育ポンチ新案絵ばなし(明治27年)→http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/850879

【過去の関連イベントへのリンク】
・展示「発見!「明治ポンチ本」 明治末期の出版流通空間」大阪府立図書館・国際児童文学館2018年8月1日~10月31日
・研究会「明治ポンチ本を読む」学習院大学2018年10月6日